『フーガはユーガ』感想
伊坂幸太郎の『フーガはユーガ』
「僕の弟は僕よりも結構、元気です。」
少し特別な力を持った双子の話。
双子の兄弟もので切ないと聞いて、とても気になっていた本でした。
(ややネタバレ)
内容は相変わらず外れなしの面白さに伏線回収!
全体像を掴ませない構成が、いつもよりもミステリーに寄ってるようで、少し新鮮だった。
好みなのもありますが、伊坂作品の中でも読みやすく、あっという間に読み終えました。
主人公優我がアクションを起こす理由は、横暴な父に尊厳を踏みにじられていた自分や、過去には女の子を救えなかった自分に報いるのための、リベンジ戦。こういう所が好きでした。
父とも呼べないDV父に立ち向かい、街で起こる胸の悪くなるような事件に向き合う兄弟の話という点で、重力ピエロと少し似ている。
そういうテーマでも、どこか飄々としてそこまで重苦しくならないのが伊坂さんらしい。
彼らはこれまで出てきた兄弟…安藤兄弟(魔王)やスプリング兄弟(重力ピエロ)…に比べると、さっぱりしていて普通の「兄弟らしい」。
ただ、そうやって愛を語る必要がない位、彼らには初めから表裏一体で、それこそ二人で一つという印象があった。
この小説は「撃たれてから」を含めほとんどずっと優我の目線で進むのが印象的だった。
最終章も時々もしかして…?と思わされる。
安藤のようにツいてる側の見守る目線はこういう感じなのかもしれない、と思えた。
(と思ったら、本人が言っていましたねp44で。安藤の鷹といい、こういうのうまいなぁ)
双子は…入れ替わって戦うことができる事が、
もしも片方が動けなくなっても、誰かの前に本人かのように現れる事ができるのが特別ですね……涙
懐かしい名前とも少し出会えましたね。
そういえば優我に名前が似てることユーゴ(オーデュボンの祈り)は、未来が見えてしまうけれど、それをどうにかする術は持たない案山子だったな。
↑読んでいて思い出さずにはいられなかった、DV父のもとで、二人なんとか生きてきた、不思議な現象を持った双子の話
↑個人的には双子の不思議な能力と入れ替わりといえば、これ