『かがみの孤城』、感想
話題作だったので読んでみることに。
最初は不登校の主人公の、内にこもった心を孤城に例えた、現実寄りの話かと思ったが、
すぐに、鏡の中に吸い込まれるというファンタジックな展開が訪れる。
鏡の中には孤城があって、中学生たちが集められている。
そこには「オオカミさま」という、狼の面を被った案内役の少女がいて、この城にある願いが叶う鍵を探すことを薦めてくる。
親指さがし的な話だろうか?
さらに、ルールに、魅力的な報酬に代償に、と、報酬目当てのバトルロイヤル的なのを想像させるテーマ。
そして夜に城にいたら「喰われる」という不穏なルール。見知らぬ少年少女が半強制的に集められるところからもクローズドサークルものっぽさも感じた。
しかし、実は鍵探しの要素はそこまで出てこない。メインとなるのはむしろ、そこに集められた中学生たちの交流だ。
文は6時間程度で読み終わるくらい読みやすく、
内容もファンタジック。それでいて思春期の子供たちの、それくらいの年頃らしい、しかし彼らにとって人生の多くを占める悩みに向き合っていく話で、心温まる展開が多いので、小中学生の読書感想文にもいいのではないかと感じた。
この話には叙述トリックがいくつかあるのだが、理屈よりはファンタジーとして片付けられる部分が多いのと、一つのトリックは早くから気づく人は気づくと思う。「彼らが会えない仕組み」は、予想が当たってしまった。
そのためミステリーやSFとして読むにはライトだと思う。
それでも、伏線がどんどん繋がっていく様は爽快だった。ああ、こんなことも仕込んであったのか!と。
そんな「3学期」の章は面白く、一気に読んでしまった。
一番最後に出てくるエピソードが好きだ。ここで、主題に見えて鍵探しが中途半端にしか出てこなかったことや、ペナルティが甘かったことの説明がつく。
ここまで読んではじめて、この作品の魅力を知ることができる。
姉弟はいいね…。
精神世界で、失った大好きな姉に語りかける弟の図が心にくる。
弟には甘かった姉ちゃん、お話をつくるのが上手な姉、願いを一つ叶える約束。
振り向かない凛とした姉は、病床にいて、弟へ「これ」をしようと考えた彼女は、とても魅力的だった。
三十日の謎は切ない。
全部読んだ後で、章タイトルを見るとまたじんわりする。
そういえばこの作者は、ツナグの作者さんでしたね。ちょっと不思議でちょっとハラハラして、最後には心温まる話を描かれる方なんだなと思った。
下二作は、はじめに、かがみの孤城はこういう話かな?と想像していた二作品