『死刑に至る病』感想
櫛木理宇の『死刑にいたる病』
人に勧められて読んだ。
この本では被虐待児のその後の傾向や、サイコキラーの心理や心身掌握術の話がじっくり語られる。
これらには興味があるので興味深く読んだ。
何が真実なのかや、主人公の内面が変化していく様が気になる内容も純粋に面白い。
作中では悲惨な内容もよく出てくるのだが、不思議と嫌な感じがしない。
他にもこの著者の本を読んでみたいと思わせる本だった。
冒頭に引用されていた寺山修司の『疫病旅行記』も気になる。単行本は出ていないのかな。
この本には1人のシリアルキラーが出てくる。
「魅力的な人物」という作中での設定が描かれる事はままあるけれど、それを本当に実感できるような作品は珍しい。
彼は口調から描写から、全て見ていて魅力的だ。常に爽やかで心地よく目に移る。
個人的にBLOODY MONDAYのJと似たものを感じた。好きです、こういうキャラクター。
全てがわかった後でも最後まで、その印象が変わらなかったのがこの本のすごいところだなと思う。
作中の登場人物と自然に同化しているからこそかもしれない。
また、この印象は文章が綺麗なのもあるかもしれない。
内容はハードであり、サイコサスペンス的であり、どんでん返しもあり、目が離せない内容だが、それでいて読んでいて心地よい本なので、好きな本になった。
個人的には改題される前のタイトルだという『チェインドッグ」が呪いをかけられた被害者たちや囚人を表してるようで好きだったけど、今のタイトルももしかしたら『死に至る病』を読んだらしっくりくるのかな?
あとこの本を読んで気づいたけど『秘密』の鍵となるサイコキラー「貝沼清孝」は、実在の加藤清孝から来ているのか。
この作品にない「気持ち悪さ」がありながらも、最後まで魅力的なサイコキラーが出てくる点では殊能将之の『ハサミ男』も共通している。