stormy97’s diary

あわよくば人に勧めたい、作品の紹介と感想

ミュージカル「フランケンシュタイン」2020 感想

ワン・ヨンボム脚本のミュージカルフランケンシュタイン

ダブルキャストで、中川晃教さんヴィクター、小西遼生さん怪物の回でした。

いやー良かった。

 

どう良かったかざっくり言うと

前半「こんなブロマンスだなんて聞いてないぞ!!」

後半 「すごく良質な悲劇を見た」

 

以下は感想兼覚書です。

 

ヴィクターフランケンシュタイン博士は悲劇の主人公だった…

 

・冷酷なサイエンティストとして、人から理解されなかったフランケンシュタイン博士。親友アンリを得てから人らしい言動を表に出すようになる。

↓↓↓

・人殺し、処刑しろ、と糾弾されるアンリ

・2人で夢を叶えたいヴィクターとアンリ

・実験を成功させるのに必要になった新鮮な死体

・冒頭で一人ぼっちのヴィクター

 

そろそろ気づき始めるわけですよ。

「冒頭の、あの死体は誰なんだ?」

 

 

フランケンシュタイン博士と、彼が生き返らせた怪物は、生前共同研究者であり親友であった

まじか。

 

・「人を生き返らせる」夢に執着し、手段を選ばなかった彼は、親友が濡れ衣を着て殺されるとなっても、1度見過ごそうとする(こういう情<目的というドライさ大好き。ありがとう!!!)

 

でも、土壇場でやっぱ親友殺すことはできないと思い返すんですよね。人の情を持つようになって…!

まあこの行為虚しく、虚言だと言われて処刑は行われてしまうのですが。

 

(人殺しだ、魔女だ、と1人が大勢に濡れ衣を着せられる場面が何度か出てくる。可哀想だと思いつつ、この民衆により一方的に糾弾されている構図止められない悲劇を感じてゾクゾクさせられた)

(裁判ものっぽさがまた良かった…あの、聞く耳持たない民衆が、駆け寄り話しかけるヴィクターに対して一時停止した画面のように静止画として描かれてる演出は宝塚カラマーゾフ思い出しましたね。)

 

処刑された親友の首……新鮮な脳が手に入ったので人を生き返らせようとするヴィクター。

 

自分の濡れ衣被って死んだ親友の死体を、実験に使う。

これって傍から見たら正気の沙汰じゃないわけですよ。うわあ〜合意の上の墓荒らし!!!!

人情を取り戻した結果、傍から見てさらに狂気的な行為に手を染める事になるの皮肉でいいね……。

 

もう1つブロマンス的推しポイントいいですか。あのね。

ヴィクターは死体を生き返らせることに固執してたのに、ついに肝心の死体が手に入ってからは「親友に会いたい」が行動原理に侵食してきているでしょう。

 

だから映画屍者の帝国が好きな人は舞台フランケンシュタインを見てくれ。

 

 

・実験を成功させるには新鮮な肉体が必要だ。

「私が頼んでみましょう」「天才の発想じゃん!」

というコミカルなシーン。

次の場面では、突然アンリが「人殺し」と糾弾されている。(何があったんだよ、あんなに皆嬉しそうだったのに。嫌な予感しかしない……)

 

ここのスピード感すごかったな……

これを皮切りに、どんどん状況が悪い方へ悪い方へ転がっていくの、これぞ悲劇という感じで良かった……

たとえ心を入れ替えても、結果は変わらないのだ。現実は非情。

 

・全体に時間軸の演出がとても良かった。

 

・ヴィクターが正直に白状してでも助かって欲しい、という考えになるころ、親友の方が決意を固めて頑として譲らなくなるの最高なんだよな…。その決断でお前が死ぬのによ……。

 

・なぜ濡れ衣を被ったのか、そしてそれを受け入れるのか、というアンリの考えがまた良い。

「研究を成功させるには自分より、優秀な(そう俺が認めている)ヴィクターが生き残る必要があるから」

「初めて会った時からその瞳(=理想を見る瞳とその理想かな)に恋していた」

理想への惚れ込みと共感と憧れと、あくまで合理とそれが成り立つ、安心して先を任せられる信頼!!!

 

これだからブロマンスは!!!!

文字通り身体を命を差し出せるほどの信頼は愛と言い換えても差し支えないだろう。

 

・予想外の死に別れ託し託され戦友ブロマンスと皮肉たっぷりの悲劇という、たまらない要素を浴びせられ、一幕後半だだ泣きでした。

やばいものを見せられてしまった。

 

 

1幕終わった時点で、フランケンシュタイン原案のオリジナルストーリーかな?と思ったんですよね。

けれど、2幕を見るに映画とほぼ同じ流れだった気がする。

実際どうなのだろう?ヴィクターと怪物の生前のエピソードだけ追加した感じなのか、結末だけ合わせて、全体に結構オリジナルストーリー入ってるのか。気になる。

映画見返して、原作も1度ちゃんと読んでみようと思いました。

 

・生き返った親友……怪物になってしまった、が、暴れて執事を襲う。親友なんだろ?って信じて自我を確かめようとするのが悲しいよフライデー。そしてその処分を自分でしなくてはいけなくなるのマッドサイエンティストの出てくる作品の様式美ですね。

 

・"生き返らせたのは親友だった"という事実が色々な箇所で効いてくるんですけど。

味方だった親友の顔で詰られ大切な人を殺されるのってどんな気分なのだ。

 

・姉と弟の演出いいね……私だけは抱きしめてあげるわみたいなニュアンスのこと言いながらすがる弟をすり抜けて去っていく姉。ウワー!!

上の子ってそういうものなんですか?この舞台のヴィクターは弟力強めで大層可愛かったです。

 

・怪物と女性が心を通わせるシーン、刹那的だけど純粋な愛情と優しさがあって素敵。

 

・雪山のシーンが美しい 最後の叫びが素晴らしかった……。

 

 

後半時間が経ってから書いているので、いずれDVDを手に入れたらまた追記したいと思います。