虐げられた人々
4作目に読んだドストエフスキー作品。彼の作品は長台詞があったり、哲学的な話が織り込まれていることで有名だが、この本は驚くほど読みやすい!
初めから場面に引きつけられる。短編だからというのもあるかな。
今までに読んだドストエフスキーの長編って、ジャンル:ドストエフスキー みたいな印象だったけど、これは普通の本として読める。個人的には、ドストエフスキーを初めて読むならぜひこれを!と言いたい。
可哀想で仕方がないんだけど、透明な日差しみたいな後味。綺麗な小説だった。
この作品で好きな台詞を一つ引用して、ネタバレの感想に入ります。
p405 ムイシュキン公爵
「美徳が美徳であればあるだけ、それに含まれるエゴイズムもまた多くなる」
とても、共感させられる。
「会っていれば一番に愛してくれるけど、少しでも会わないと別の人に同じ愛を注いでしまう。だから自分がいつも側にいなくちゃ。」…こういうナターシャの気持ちわかるな。
アリョーシャ、いるわこういう人!笑
作中で、無邪気な好意が否定されて喧嘩になる場面がある。当然の理由ではあるんだけど、辛い。
直接出てこない、ただのお嬢様だと思われたカーチャが、グループに入って慈善事業を始めようと行動を起こしていると明かされる。カラマーゾフ2部が書かれる時、アリョーシャもこんな書かれ方する可能性あるな、と思った。
読み進めてくとわかるけどアリョーシャの説明は、裏表紙の文ジャストだ。
カーチャめっちゃいい子。
どうしようもない悪いことをするわけじゃないけど、ナターシャのためにネリーを引き回すあたりイワンはよくも悪くも普通の人。
p65 「そうしろと言われれば、すぐ飛び出してしまう。犬っころみたいに、口笛で呼ばれればすぐ走っていくのよ…苦労なんて!あの人のための苦労ならちっともこわくない!あの人のために苦労するって分っていさえすれば……」ナターシャの話には、『カラマーゾフの兄弟』のグルーシェニカを思い出した。
この本にも、ドストエフスキーの他作品で見かけた名前と、共通した性質がちらほら。
例えば、アリョーシャは神がかり的でイワンは知的な常識人かつ咬ませ犬…に、見える。
ロシアの名前はパターンが決まりがちなわけじゃなくて、やっぱりスターシステムなのかなぁ。
脇役は名前にレパートリーがあるし。