stormy97’s diary

あわよくば人に勧めたい、作品の紹介と感想

VANILLAFICTION7巻 感想(2015)

大須賀めぐみさんの作品、『VANILLA FICTION』

 

今回は鞠山編と書かれていた通り、展開はあまり進まずに、鞠山親子に焦点を当てた一冊でした。
薄々彼らに何かがある事は聞いていましたが、、、こう来るのか。

 


【以下ネタバレ】


太宰が一瞬鞠山に見えて、ここでか⁉︎と思ったのですが「何か」はその程度じゃありませんでしたね。
今まで見なかったような鞠山の表情が、笑顔が、敬礼が、本当に辛い。
指輪を外すと捻じ曲げられた運命が元に戻って死ぬというルールは、裏を返せば死の運命を変える手段にもなるわけで…。こう来るのかーー。こんなに非情なシーンなのに、あまりに幻想的でした。
最初はなぜ指輪?と思っていたけれど、大須賀さんの演出力には毎回圧倒させられます…。

ここまでの鞠山の目からも空虚さというか、運命から逃れる方法が無いだろう事と覚悟が伝わってきて苦しかった。
助からないとはわかっているけれどいつも通りに元気でいるので、その事から目を逸らしたくなりました。それでも最後までどこまでもお父さんで…かっこよかったよ鞠山さん…。


最後のドラジェの姿が、熱いけれど、辛い。
日常の象徴のようだった彼の表情が重いものになってしまって、物語が大きく変わった事を感じさせられました。
そういえば、彼女の作品中お気に入りの人が死んでしまうのは初めてでした。。

鞠山サイドのゴール条件に、ゲームの矛盾点も明らかになりましたね。
矛盾点は、
ゲームは世界が滅ぶか滅びないかの2択を決めるものである。
つまり1組がゴールできれば救済、できなければ滅亡とする、2組にするにしてもどちらか一方を救済、もう一方を滅亡とすれば事足りるはずなのにプレイヤーは2組いて、交代可であり、どちらがゴールしても救済であるという事。
矛盾点というより、ゲームのルールに間違いがあると疑えるくらいに、合理性がない事が判明したというのに近いのかな。
ルールが違うというのなら、死の運命というルールも間違っていてくれないかと願わずにはいられませんが…無理だよなぁTT


最後に、表紙の花は忘れな草のようですね。花言葉は「真実の愛」、「私を忘れないで」。
まさしく。