小説『オー!ファーザー』 感想
『オー!ファーザー』伊坂幸太郎
個性豊かなお父さんたちと、その息子由紀夫を中心に、知事選挙や不登校の生徒、峰岸的な意味で怒らせるとヤバイ男…などが織りなす物語。
他の伊坂作品の例にもれず、オー!ファーザーもネタバレ無しで読んだ方が絶対に面白いので、核心に触れずさらっといきます。
中盤までは伊坂作品の中でもコメディ色強めでほのぼのした印象。
物語後半、由紀夫の身にある事件が起こってから、また違った面白さがぐんぐんでてきます。
やっぱり伊坂作品だなぁ。
クイズ番組の下りが面白かった!
読んだ今、映画版のポスターを見ると、誰がどのお父さんだかわかるわかる……笑
映画版もそのうちに観たい。
個人的には鷹さんがどんな風に実写化されるのか気になるな☺️
そういえばこの小説、グラスホッパーの蝉を主人公にした漫画、『Waltz』の元ネタになってると思しきネタがたくさんありました。
waltzでは岩西と蝉の関係を、思春期の子と父の擬似親子のように描いてる部分があるので、父子の絆を描いた今作とは相性がいいのかもしれない。…もちろんお父さんたちは殺しのマネジメントのような悪いことはしないけど。笑
waltz好きさんもぜひ!
解説が、伊坂作品の魅力をすごく的確に表されていました。心底共感したので、引用して終わります。
数学の証明方も、一種の起承転結の構造である。命題はテーマであり、前提は伏線であり、数式は描写や会話のコトバである。
p552,553 伊坂は登場人物を予定調和的に動かすより、作中で身勝手な言動を取らせる方が好きらしい。伊坂作品のキャラたちは、ドストエフスキーの作中人物同様、よく喋る。登場人物別に格言集が作れるくらい、本筋からの逸脱も気にせず、自説をまくし立てる。彼らの主張には首尾一貫性もあるし、説得力もあり、主人公も作者も無視することはできない。
本作は一つの事件を巡る謎解きと宝探しの物語といつよりは、サブキャラクターたちがそれぞれの役割を果たしつつ、緩やかに結末に向かうパレード的な作品。
起承転結は一つの人格の中にもある。(中略)だから、伊坂はどれだけ奇抜な発想で、奇天烈なキャラクターを開発し、奇矯な出来事を描いても、作中人物の複雑な悟のように、冷静に因果律で説明をつけるだろう。
自分はドストエフスキー作品も好きなので、…実をいうと出会ったのは伊坂作品きっかけなのですが笑……好きなものの両方に通じる魅力があると、専門家さんの口で述べられてるのはとても嬉しい。
やはりポリフォニックで色んな物語が絡み合った作品は魅力的だな。