stormy97’s diary

あわよくば人に勧めたい、作品の紹介と感想

『夢 うつつ まぼろし』感想

この本は、「夢」に関する文化や脳科学について易しく書かれたもののようでした。

 

都市伝説かな?と思っていたことに科学的な説明がついたり、言葉の意味や知らない文化を知れたりして、面白い内容でした。

夢とは、文系目線でも理系目線でも美味しいテーマですね。
それに創作をする人なら、活かせそうな嘘のようで本当の話も盛りだくさん。

 

あと内容と関係ないのだけど、書かれている日本語が美しかった!
実はなんとなく開いてみたところ、目に入った文が小説でないとは思えないほど美しかったので、読むのを決めました。笑

この本は複数の著者により書かれていたが、特に高田さん、北浜さんの書かれた箇所は惚れ惚れする言葉選びで、文も楽しませて頂きました。

もちろん読みやすく、正味一日で読了。

 

 

 

雑多な内容メモ

・夢には3種類、「」、「」、「」があって、
夢は枕を(寝ている時に)
幻は術を(人工的に)
影はメディアを(占いのように石や鏡に映って)
媒介に見るものを言うらしい。

 

・夢で恐怖を感じない理由は、その時大脳の恐怖の部位が刺激されていないから。

普段だったら恐ろしく感じるはずのものが、夢の中では怖く感じなかった覚えがあるので、なるほど!と思った。麻酔中に目は見えているのに恐怖心は薄れていた理由も、これと同じか。

 

・瞑想が修行になるという話は、恥ずかしながら「精神論だ」とあまり信じていなかったのだけど、こういった訓練をした者は、脳波が常人と変わるらしい。すごい事だ。

 

・p165によると、鮮明な夢を見るレム睡眠状態には、「ストレスが強い状態では不安や恐怖を伴う悪夢が現れやすくなる」らしい。


生理周期に合わせて月一度悪夢を見る人の話を聞いたことがある。

それはもしかしたら、生理(に伴うホルモン等の変化)が直接働いて、夢に影響を及ぼすのではなく、
生理が、ストレスへの感受性を上げ、またストレスを増長させ、そのストレスが悪夢を引き起こしているのではないか。

 

・新しい行動や環境に触れ始めることなどによって、ある種ストレスが溜まると、脳の整理のために夢を見やすくなる。

 

・p172 (手術などにおいて)大脳皮質に電流を流すと、その間夢がみられる らしい。

別の章によると、意識することで明晰夢を見たり紙に見たい夢を書くことでそれを見やすくなったりすることも可能だというから、

夢のオンオフを操ったり、果てはその内容を決めるのも既に可能かもしれないんだな、すごい。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』には、好みの気分を演出する機械こと「情調オルガン」が出てきたが、これさえ実現可能に思えてくる。これぞ「夢」!

 

・p135 「最近の若者は形式上『夢見て』それをわざと『諦める』事に酔いがちだ」という話。

ライ麦畑でつかまえて』の主人公は中二病っぽいところがあるので気恥ずかしいと誰かが言っていたが、もろにこれが例にあげられて、ずばっと「プチ自傷」だなんて中二病を一刀両断するかのように書いてあって笑った。


・大脳皮質の活性化させることで、それに纏わる夢を見られる。
恐怖やストレスに関する部位が活性化したら、悪夢を見る上、その内容は多くの人で共通してくるそう。内容が共通するというのが不思議だな。なぜなんだろう。

 

・ストレスを増幅させる(結果悪夢を見せる)薬や、前夜の暗記を寝起きに全て忘れさせる睡眠薬が存在しているらしいというのも驚いた。

 

・関係者の、鎌倉権吾郎さん、原田哲夫さんのお名前に聞き覚えがある気がした。何かに引用されていただろうか。

 

・そういや『秘密』という漫画の2巻で、「『夢がリアルタイムでの外界の刺激に影響を受ける』というのは今は否定されている」って注釈がついてた気がするけれど、この本ではこの説を肯定していたな。

この『秘密』は、脳が見たもの、それこそ夢や幻を含めた記憶、普段は忘れている記憶を映像として視覚化できるようになった世界の犯罪捜査の話なので、こういったテーマに興味のある方には面白いと思う。

 

 

最後に脱線。

・タイでは蛇の夢を見るのは「新しい恋人に出会える」の意で、蛇が自分の身体に巻きついたら「出会う人は運命の人」だという。

NO.6を思い出しましたね…。1巻参照。

 

・「デウス・エクス・マキナ」という言葉があると知る。全部持ってく神さまの事だそうですね 笑

 

・それから、うちは一族の術は、名前にも能力にもぴったりだなと思った話。

NARUTOが熱いのでまた話すよ!

この作品に出てくるうちは一族は幻術を使う。
その中でも、血の繋がったうちはカガミ(鏡→「影を映すもの」が語源)とうちはシスイ(止水)。かっこのような漢字を当てはめると、彼らの名前はどちらも幻の媒介だ。
そして、彼らうちは一族の能力は洞察と催眠(幻を見せる)というから、どれもぴったりじゃないだろうか。

 

これも仮定の話だけど、脳の特定箇所に興奮を引き起こせばいいなら、普通の催眠と同じ様に、月読(恐怖体験をさせる幻術)は現実世界でも実現しやすい位置にあるかもね。