『十二人の死にたい子どもたち』 感想
『十二人の死にたい子どもたち』どこで知ったのだったか、あらすじに興味を持って読んだ。
読みやすく3日程で読了。
エンタメ小説という印象。
子どもたちの、それぞれ置かれた環境に基づく思考の癖の描写が個性的で面白かった。
【以下少しネタバレ】
子どもたちが議論する形で進む推理が、やや長く説明調に感じてしまった。
それはどうせ死ぬという結果を決めているならその前に何をしたって関係ないし、とっとと実行してしまえばいいのにという感覚が自分にあるためだと思う。
それぞれの子どもたちは死を選んできたけれど、その割に論点に関わらないところに拘ったり感情的に意見を変えたりするので。
まあ実際は人間一貫していない部分ももち、「なんとなく」こそ力を持つようなそちらの方がリアルなのかもしれない。
そこが長かった分、真相についてはふーんそうか〜という感想だった。
やはり自分は理論的で一貫性のあるシンジロウやリョウコ、それからメイコのような人が好きだ。
メイコは歪んだ人物として描かれてるようだけど、行動基準も理由もはっきりしているので見ていて納得がいく。
「奪い取ろうとすればするほど自他を貶めることになるし、そもそもその椅子にどんな価値があるか問うたところでメイコには何を言われているのかもわからないだろう。」そんな風にアンリに評されるメイコには、そういう人物が他にもいたなと思ったり。
シンジロウの思考こそ娯楽、体が動かなくなろうと思考手段と何か一つの伝達手段があれば成り立つというのには共感する。
後書きに、一人心底捻くれてしまっていて、読んだものが共感しにくい人物がいると描かれているが、ピンと来ず。誰だろう?メイコ?アンリ?
個人的には、途中の謎が増えていく起承転の部分がより面白かったな。
あと真相については最終章は予想外でけっこう面白かった。
著者の冲方丁さん、なんだかすごく聞いたことのあるお名前だなと思ったら、サイコパスや攻殻機動隊の脚本をしてらした方なのか。マルドゥック・スクランブル。なるほどなるほど。
この本、漫画化や映画化されているんですね。
小説では、人物描写が考える前に見た目も口調も勝手に浮かぶように巧だったので、それがどんな風なビジュアルになっているのか気になる。
いずれ観てみたい。