『硝子戸の中』の感想と「月が綺麗ですね」の解釈
紹介されていた抜粋が非常に美しかったので読んだ。
もっと言うと、好きな関係性の二人に重なって見えたので読んだ。笑
『夢十夜』の第一夜と似ているとの紹介で、勝手に小説と思って読んでいたが、随筆だったらしい。
でも確かに女性が出てくる章なんかは静謐でミステリアスでそっくりだ。
こういう話をもっと読んでいたいな。
その際たるものが「七」の章。
抜粋もここであり、硝子戸の中で最も好きだ。
自分の過去を書いてほしいという、傷ついた女が出てくる。彼女はとても語り手には救えない傷を負っているように見える。
その傷の内容は語られないが、彼女の愛した第三者によるものではないか、という人の解釈を聞いた。
彼女が投げかける質問がとても良い。
「もし先生が小説を御書きになる場合には、その女の始末をどうなさいますか」
私は返答に窮した。
「女の死ぬ方がいいと御思いになりますか、それとも生きているように御書きになりますか」
その後女を見送る時に、月夜の中二人で歩いて彼女が先生といられて光栄だ、といったことを言う。
そこで先生が返す言葉が
「そんなら死なずに生きていらっしゃい」
これこそさっきの問いの答えではないだろうか。いいなぁ。答えとしても、自分への情を感じた時に望むこととしても。
そして私は
女がこの言葉をどう解釈したか知らない
のだ。ここまで素晴らしい。
個人的には女はいずれ死ぬ気でいたならば、先生の言葉でそれを変える気はなさそうに思える。
ちなみにここが「月が綺麗ですね」の元ネタだという説があるらしい。
恋の関係にある二人の話と思っていたが、先生と彼女のような親しくはないが尊敬や同情のある二人の話だとするとこれまた胸熱だ。
「月が綺麗ですね(愛している)」へのme tooが「私死んでもいいわ」だというが、このシーンを思うなら、「私死んでもいいわ(愛している)」は、「月がー」を言った人に向けたものですらなく、「結末は『生きる』にするべきか『死ぬ』にするべきか」→「生きていらっしゃい」の言葉への反論、
それほど、彼女が悩む原因となった第三者やその思い出を「愛している」ということにならないか。
とここまで考えが飛躍した。
人の感情や著者の心を動かした出来事が書かれているはずなのに、どれも淡々として静かだ。
それは女性が出てくる章ではより顕著な気がする。
聞いたところによると、これ(男が多弁でなくはっきりせず女はミステリアス)が「エロティシズム」の特徴らしい?
ミステリアスな女は大好きだ。月、夜、病んだ女性、アールヌーボー的な女性像…アールヌーボー的な女性は猫(=隠れた美?)を好むらしい笑…これが漱石の得意なものだそうで、それなら好みに刺さる訳である。笑
あとは、タイトルのように著者が硝子戸の中から外を眺める情景が静謐で美しい。
文体が綺麗で、また5ページ程度の短い章の組み合わせなので読みやすく、数時間で読了。
彼の作品を読んだのは二作目だったが、またこの人の作品を読んでみたいと思った。
『死刑に至る病』感想
櫛木理宇の『死刑にいたる病』
人に勧められて読んだ。
この本では被虐待児のその後の傾向や、サイコキラーの心理や心身掌握術の話がじっくり語られる。
これらには興味があるので興味深く読んだ。
何が真実なのかや、主人公の内面が変化していく様が気になる内容も純粋に面白い。
作中では悲惨な内容もよく出てくるのだが、不思議と嫌な感じがしない。
他にもこの著者の本を読んでみたいと思わせる本だった。
冒頭に引用されていた寺山修司の『疫病旅行記』も気になる。単行本は出ていないのかな。
この本には1人のシリアルキラーが出てくる。
「魅力的な人物」という作中での設定が描かれる事はままあるけれど、それを本当に実感できるような作品は珍しい。
彼は口調から描写から、全て見ていて魅力的だ。常に爽やかで心地よく目に移る。
個人的にBLOODY MONDAYのJと似たものを感じた。好きです、こういうキャラクター。
全てがわかった後でも最後まで、その印象が変わらなかったのがこの本のすごいところだなと思う。
作中の登場人物と自然に同化しているからこそかもしれない。
また、この印象は文章が綺麗なのもあるかもしれない。
内容はハードであり、サイコサスペンス的であり、どんでん返しもあり、目が離せない内容だが、それでいて読んでいて心地よい本なので、好きな本になった。
個人的には改題される前のタイトルだという『チェインドッグ」が呪いをかけられた被害者たちや囚人を表してるようで好きだったけど、今のタイトルももしかしたら『死に至る病』を読んだらしっくりくるのかな?
あとこの本を読んで気づいたけど『秘密』の鍵となるサイコキラー「貝沼清孝」は、実在の加藤清孝から来ているのか。
この作品にない「気持ち悪さ」がありながらも、最後まで魅力的なサイコキラーが出てくる点では殊能将之の『ハサミ男』も共通している。
『かがみの孤城』、感想
話題作だったので読んでみることに。
最初は不登校の主人公の、内にこもった心を孤城に例えた、現実寄りの話かと思ったが、
すぐに、鏡の中に吸い込まれるというファンタジックな展開が訪れる。
鏡の中には孤城があって、中学生たちが集められている。
そこには「オオカミさま」という、狼の面を被った案内役の少女がいて、この城にある願いが叶う鍵を探すことを薦めてくる。
親指さがし的な話だろうか?
さらに、ルールに、魅力的な報酬に代償に、と、報酬目当てのバトルロイヤル的なのを想像させるテーマ。
そして夜に城にいたら「喰われる」という不穏なルール。見知らぬ少年少女が半強制的に集められるところからもクローズドサークルものっぽさも感じた。
しかし、実は鍵探しの要素はそこまで出てこない。メインとなるのはむしろ、そこに集められた中学生たちの交流だ。
文は6時間程度で読み終わるくらい読みやすく、
内容もファンタジック。それでいて思春期の子供たちの、それくらいの年頃らしい、しかし彼らにとって人生の多くを占める悩みに向き合っていく話で、心温まる展開が多いので、小中学生の読書感想文にもいいのではないかと感じた。
この話には叙述トリックがいくつかあるのだが、理屈よりはファンタジーとして片付けられる部分が多いのと、一つのトリックは早くから気づく人は気づくと思う。「彼らが会えない仕組み」は、予想が当たってしまった。
そのためミステリーやSFとして読むにはライトだと思う。
それでも、伏線がどんどん繋がっていく様は爽快だった。ああ、こんなことも仕込んであったのか!と。
そんな「3学期」の章は面白く、一気に読んでしまった。
一番最後に出てくるエピソードが好きだ。ここで、主題に見えて鍵探しが中途半端にしか出てこなかったことや、ペナルティが甘かったことの説明がつく。
ここまで読んではじめて、この作品の魅力を知ることができる。
姉弟はいいね…。
精神世界で、失った大好きな姉に語りかける弟の図が心にくる。
弟には甘かった姉ちゃん、お話をつくるのが上手な姉、願いを一つ叶える約束。
振り向かない凛とした姉は、病床にいて、弟へ「これ」をしようと考えた彼女は、とても魅力的だった。
三十日の謎は切ない。
全部読んだ後で、章タイトルを見るとまたじんわりする。
そういえばこの作者は、ツナグの作者さんでしたね。ちょっと不思議でちょっとハラハラして、最後には心温まる話を描かれる方なんだなと思った。
下二作は、はじめに、かがみの孤城はこういう話かな?と想像していた二作品
『あなたの人生の物語』感想
公開当時に表題の映画化作品「メッセージ」を観ていたが、当時は原作が難しく途中で止まっていた。
数年越しに再挑戦。相変わらず難しいながら、面白かった。
先に知っていたことが理解の助けになったので、映画を先に観ておいてよかった、とも思った。
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短編集をふだんあまり読まないのだが、短編同士に共通したテーマや作者の思考型がすこし覗けて読めば読むほど発見がある。短編集の面白みに気づいた作品にもなった。
独自のSF設定が多めで、言語学などより楽しむのに必要な知識は作中ではあまり解説されず、文体も頭の良さそうな印象※なので、エンタメが好きな人よりは、小難しいのが好きな人、SF慣れしている人向けという印象。
※巻末の作風の解説で、この辺りには納得がいった。
【以下ネタバレ感想】
バビロンの塔
バビロンの塔を作る作業員たちの話。
バビロン(バベル)の塔の話はふんわりとしか知らず、神々しいイメージがあったので、こんなに等身大の作業員たちが出てくる話とは驚いた。
筒状にした紙のように、天は地に繋がっていたのだというおち。
理解
人間関係より頭脳の発達の方に重きを置いたアルジャーノン。
損傷が大きいほど復元の過程でより頭脳を良くできるというのは何だかしっくりくる。
脳神経を繊細に発達させるのは難しそうなので一から作った方が簡単そう、というか。
でもそれだと頭良くなったその人は、もとのその人と同じと言えるのかな。
主人公は同じく作られた天才と対決することになり、相手が「理解」と口にしたことで負ける。
肝心のこのセリフの意味が理解できず、残念。調べると訳してない英語ならわかるという話も見るのだが、果たして…?わかる方いたら教えてほしい。
天才二人の、超越した頭脳の活かす方法が自分のため⇔世界のためと違うことや、それらのぶつかり合いが面白かった。
身体能力の向上、常人より低血糖に注意など、天才の描き方も興味深い。YASHAという漫画で描かれた人工的な天才の双子にも、その特徴が当てはまったからだ。
「人工の天才」に関して、元ネタがまとまっている文献などがあるなら読んでみたい。
こういう話ではよくテレパシーが出てくるな。自分には非現実的なものに見えてしまうこれにも、何かしら根拠があるのだろうか?
またこの作品で特に、「『あなたの人生の物語』と同じ作者が書いてるー!」という感動を味わった。その章の方に後述。
ゼロで割る
数学は筋が通っていない、世界と結びついていないと気付いてしまう数学者の話。
自分は数学で虚数が出てきたあたりから、果たしてこれは地に足ついた話なのか過程の話なのか判断できなくなったけれど。(実際どっちなんだろう?)
この主人公は地に足ついた話だと信じていたが、そうでないと気づく。
自分の人生の基盤をなす価値観を、自分で反証してしまうというところに、イワンカラマーゾフに似たものを感じた。
理性的であるほど、その現実は耐え難いものとなるよね。
作中に出てくる主人公の夫にとっては、その基盤は、女性との関わり(…うまい表現が見当たらないが解説の言葉を借りると主人公にとっての数学は夫婦仲のメタファー)だったのだろう。気持ちは「わかる」のだが、それを明らかにすることは自分の信念や世界と反するのだ。
あなたの人生の物語
「メッセージ」の原作。
時勢そのものが演出になっており、不思議な感覚を味わえるところが好きだ。
三世の書の問題は、両方文脈によって成立しえるけど、両立は不可能との説明で、なるほどなと思う反面疑問も残る。
未来を知った者は具体的にはどのように…どのような方法・心理で、それを遂行することになるのか?義務感が生まれるのなら、それはどういう事が心の中で起こった結果なのだろう?いや、結果はおかしいか。
また、どこまで制御可能なんだろう?読んだ場合・読まなかった場合に共通した心の動きまで紙に書いておけるのか?いやいや、読むならば読むことが自明なのか?
こうやって因果のない考え方(=変分原理?)は、やはりうまく飲み込めない。でも作中に出てきた「光は最速で届く距離を通る」の考え方のように、今までに自然に受け入れてきていることもあるのだろう。
この考え方は面白いなと思った。
「理解」101ページに
これは…(中略)大きな一つの象形文字としてとらえるべきものなのだ。こういった象形文字は、単語を千個並べても表すことはできない内容を、絵よりも意図的に伝えることができる。象形文字一つ一つの複雑性は、それに含まれる情報の量に比例するだろう。
とあった。
ここでも共通して象形文字のようなもの、情報の一覧性に優れ、より抽象的な「文字」が、高レベルなものとして描かれていて、ああこの作者が描いたんだ…とテンションが上がった。
また、これが知性の発達(「理解」では文字通り、「あなたの〜」では同時的意識の獲得)と同時に描かれていることから、言語体系の変化が、認知能力を変える、といった考え方を持つ人なんだろう。
かなりざっくり言うと「言葉は思考を規定する」、伊藤計劃の小説でもそういった考え方が出てきていたので興味深い。そういう学問があるのかな。言語学?
変分原理(物理学)
七十二文字
この短編集では、いずれの作品も何かしらの今常識として採用されている前提が逆だった場合の「もし」の世界を書いているように思える。
生き物の発生についての説は卵原説と精原説の二種類ある。
今は卵原説が採用されており、それで説明づけられているが、この話はおそらく精原説が採用され、なおかつそれを発展させてきた世界だ。
この作品は「発生」の原理の逆バージョンではないか。
ここでの「もし」は自然現象への解釈違いで、それに対してじっくり難しい言葉で語られているため読むのが辛かった。
著者は相当言葉に期待しているんだなーと思っちゃうけどこれすら客観的に仮定を膨らませてるだけなんだろう。頭柔らかいなぁ。
文化というものには、それ自身を永続化させようとする性質がある
から、環境を豊かにすることだけが人を上品にはできない、という話には共感する。
だがそれが母体の中で胎児が刷り込まれることが原因、というのはなんだかな。
自分ならばミームの影響を材料にして、完全に人を育てる環境が入れ替わるまでには時間がかかるのが原因だと言う。
後半になって権力がからんでくるあたりから物語として純粋に楽しめた。
最後にストラットンがたどり着いた人類存続の方法の方が、名辞をDNAもしくはエピジェネティクスと似たものとして捉えているようで、逆に馴染みやすかった。
今までは卵か精子…あるいは人形のいずれかが本体であり、名辞は単なるオーガナイザーだったので。
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前生説⇔後生説
卵原説⇔精原説
人類科学の進化
数ページのすごく短い小説。
遺伝子操作(スギモト遺伝子療法)で、初期胚の神経を発達させ、「新人類」が作れるようになった世界。新人類は新人類だけの論文発表手段(DNT)を持つが、人類はそれを直接受信できず、翻訳して読むしかない。
比較的理解しやすい。ただ何がテーマなのだろう?
→巻末の著者の発想のきっかけを書いた「作品覚え書き」にて、科学雑誌サイエンスにドキュメンタリー風のSFとして寄稿したとわかり納得。サイエンスって小説も載ることあるんですね。
地獄とは神の不在なり
題から最も興味があった作品。
登場人物の考えの変化がメインで書かれており、こういう話は好きなので実際読みやすかった。
神への愛…信仰は方法ではなく目的であり、絶対的なものである。ということに説得力を感じる作品。
こういう話題で常に思い出すのがさっきも出してきたイワンだが、彼はこの作品でいう「神は慈悲深くない」を諦められていない。この作品の定義で言うなら、彼は神を愛したいが、条件をつけている時点で、信仰を持っていない者ということになるだろう。
この短編集、悟りについて書かれてることも多いような。
この話でいう天使の光などの要素は、全体にそれで何をしたいのかはわかるけど、もう少し具体的な説明が欲しくなってしまう。
テーマは信仰についてよりストイックに描いたヨブ記らしい。カラマーゾフのイワン周辺はヨブ記絡みらしいので連想はあながち間違っていない(?)
ヨブ記読みたい。
顔の美醜について
顔の美醜が脳で判断できなくする技術、カリーが使えるようになった世界。それを推進すべきかどうかの採決を巡り、賛否の議論が描かれる。
色んな立場や目線による賛否が総当たりのように描かれていて面白い。
もしも実在したとして、私は美しいものを見るのに生きがいを感じるからつけたくないな。でもオンオフが自在ならあったら生きやすくなるだろうか。
カリスマ性が飽和したら正しい判断ができなくなって危ない、というのはわかるけど、美の刺激が強すぎる事へはそういう恐れを感じたことはない。慣れてるからだろうか。
また作中では外見の魅力を遮断することで人を真に見て愛せるようになる、と言われていることに、極端だと感じてしまうことから、自分の中では、人の価値には外見も密接に関わっていて、フェアな評価付けが不可能な部分も全部コミで人なのだと、それが普通なのだという価値観ができていると気付かされる。
どちらが良いかはさておいて。
覚え書き&解説 を読んで
ぶっちゃけ作者の覚え書きの内容は全然わからん。頭いいのだろうなというのだけわかる。
理解できればより面白い作品だろうに自分の理解力が追いついていないのが非常に悲しい。数年後にまた読んでみたい。
p512-513
科学的世界観を背景とする記述が異様な世界に顔をのぞかせて読者に認識の変容を体験させる
認識の変容が現実の姿をも変容させ、それは人間の内面世界にも反映される、というのはチャンの作品に共通するモチーフだ。
「ひとつで全宇宙を表現する巨大な象形文字」について考察するが、作者はこうした完全言語の探求を自作の主要なテーマのひとつにあげている。
チャンがSF的なものの見かた・考えかたをいかに自家薬籠中のものとしているかがわかるだろう
解説は不明に感じた点や、なんとなく感じた作風が言語化されていて、読んで多くの部分に納得がいった。
作者は「結末に向かって話を組み立てるタイプ」らしい。こういうところがあなたの人生の物語ヘプタポッドの発想に寄与していそうだと思った。
『あなたの人生の物語』を読んで、この上巻に 神はあるか?神はあります ありません という議論があったのを思い出した。
BANANAFISH原画展に行ってきたレポと感想
池袋西武百貨店で開催されている、BANANAFISH原画展を見に行ってきました!
ばん!
ばん!!
入った瞬間、想像以上に世界観がBANANAFISH!
入り口から、来てよかったー!!と思った。
(写真OKのゾーンが多かったため、以下画像ありでの、展示のネタバレを多く含みます。
迫力が違いますので、見られる方はぜひこちらを見る前に、生で見てほしいです。
平日午後は比較的空いており、当日券を買って人の少ない中で快適に見られました。)
世界観がBANANA!と書きましたが、具体的には、舞台セットの中に展示物が飾られている感じで、会場全体が展示になっていたんですよね。
時系列に沿って、会場のセットやガイド音声が展開していくので、ほとんどBANANAFISHテーマパークのよう。
こんな細かいところまで…。
すげー!
写真では分かりにくいけど、
ご飯がかなり大盛りで、そっか、ティーンの男子のご飯だなぁと思ったり。
食卓を見ていてもじんわり感動が湧き上がってくる……BFの世界がそこにあるってことが尊いね…。
全体に、スタッフさんに愛され恵まれた作品なんだなと感じました。アニメも最後まで素晴らしかったですしね…。
アッシュと英二二種類あったガイド音声は、悩んだ末にアッシュを借りました。
ガイドと言いつつ、解説というよりは各シーンについて、彼が主に英二について思ったことをコメントしている。
跳んだ英二について、
今でも覚えている。
朝焼けの空に光るその姿はとても眩しかった。
日本食の展示で、
トーフ、納豆、いろんなジャパニーズフードを食わされたっけ。それに日本語も教えてくれたよな。
ニッポンについてはまだまだ知らないことがたくさんある。お前のことも。
英二。
お前の話すニッポンの話、また聞かせてくれよ。
;;;
…全て、どこか過去のことを話すような口調で切なくなった。
音声はいつのアッシュ目線だったのだろう。
前半だけで、視覚に訴えるバナナフィッシュワールドっぷりに大満足でしたが、まだ後半があります。
生原画!!
相当枚数があって、見応え抜群!
線が綺麗で絵としてもまじまじと見てしまう✨
実際に使われているものなので、アニメーターさんが書いたコメントが残っていたのも面白いですね。
ショーターは大きく口を開けると歯が見える、とか。
迫力を出したい月龍のカットには、上から強くパースをかけている、だとか。
「イベちゃん」「ごるおじ(だったかな?)」などと愛称も書いてある 笑
あとBANANAFISH cafe&bar にも飾ってあった台本の展示もありました。
キリマンジャロの雪のシーンの2人の視線の指示の他、ブランカがアッシュにつくシーンなんかはけっこうラフな書き方の部分もあって、ブランカが仲間になった!とか。ドラ○エかな。
さらにもう一点、DVDジャケットになっているようなアニメ調の背景の絵展示があったんですけど。
なんとあれアナログなんですね!?!?!
ふつうに印刷だと思って近づいて、20センチくいの距離でやっと、あれ、凹凸がある…?これ画用紙では……と気づいたレベルで綺麗。
プロってすごいな…
画材はパステル系(空とか質感あるとこ)の上に、ポスカ系で描き込んでるっぽかったような。
原画の話に戻るんですが、
絵はアップ用、すこし引いた用(ややデフォルメ)、引き用(デフォルメ)みたいに細部どこまで描くかも決められているよう。
本当に終盤の刺されたアッシュは、メモの解釈が合っていれば、一番細かい描き方をフルに使っているらしい。
迫力が違うわけだ…本当に綺麗に綺麗に描いてくれたのだろう 涙
GO!!のシーンも2人が表情を崩すところが比較のように飾られていた。表情が豊かで、個人的には展示してる中でも一番迫力を感じた。
いやー…見入ってしまった。
同じように涙を流すところでも2人で全然顔つきや表情の動き方が違うんだなぁ…。
最終話の原画を見終えたら、
一番最後に再び世界観を再現した展示が現れる。
これが何より心にくる。
あの図書館なのだ。
ドアの向こうに机と椅子が並び、その間のカーペットの道。
その奥にモニターがある。
ここで最後の7番目の音声。あの手紙…!!
画面には飛行機から見た空、手紙の場面が字幕付きで映し出されていた。
「僕の魂はいつも君と共にある」で、手紙から切り替わった画面には図書館で向かい合って座るアッシュと英二、
そして次に手紙の上に伏せ幸せそうに微笑むアッシュが映るんですよ……。
もう何も言う必要はありませんね。
はい。
物販は売り切れ続出と、ツイッターでアナウンスされていたのであると思っていなかったのですが、結構残っていてゆっくり買うことができました。
人気の商品は早いのかもしれませんが、記念に何か!と思っているくらいならば十分満足できるかと^^
そして帰りがけに設定資料集の予約を勧められる。
ここでの受注限定販売らしいです。……まあ買ってしまうよね、本当にありがとうございました。
4月に届くのが楽しみです!!
アニメ派の方、原作漫画も良いですよ…! 原画でも、コミカルなシーンやデフォルメ顔、線の描き方など、本当に漫画のタッチ意識して描かれてるんだなと思いました…😌 |
「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」全話見た感想
「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」
2019年秋からやっていた菅田将暉さん主演のドラマ。
予告で気になって視聴。
はじめは悪の教典とか、神様の言うとおりのようなイメージを持っていた。
言い方はあれですが不謹慎な痛快さ!!みたいな。
…実際、先生が時に楽しそうに、時に狂気的に生徒を痛めつけるぶっとんだテンションだとか、
生徒が刺された直後に流れ出す、楽しい学園もののような陽気なEDとか、そう感じる部分もありそれが面白かったりもした。
菅田さん怪演でしたね…すごい迫力だった。
しかし観終わった後のイメージは、これらとは全く違っていた。
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【以下重要なネタバレ含む】まだの方は観た後にぜひ。Huluでも全話配信してます。
この物語では、二転三転と状況が変わっていく。
毎回続きが気になるようになっており、引きが上手いドラマだなと思う。
また、犯人探ししながら観ているうちに、視聴者とドラマ内の人々がリンクして、皆が当事者になる構成で、よくできている。
これには最終回で気づき、やられた!と思った。
このドラマで、視聴者が一番やらかしやすいミスは、「疑わしい人を悪人と決めつけてしまう」ことだと思う。
自分はとあるトラウマから、極悪人にはぜっったい裏がある!!と疑心暗鬼になっていたのでなんとか柊先生は疑わずに済んだけれど(良いのか悪いのか)
でもほんと、途中で実は生徒のためでした!実は病で余命僅かです!実は彼は死ぬ気です!の3コンボ来たのはまーーた良い人がそうやって自己犠牲で死ぬのか😭!?と肝が冷えたぞ。
個人的な話になるけど自己犠牲には思うところがありすぎまして……
まあ柊一楓は自己犠牲的なんだけど、思い詰めはせず目的ありき、必要最低限の行動をしてくれてたようだったのでホッとした。(屋上のシーンとか)
あと彼に、さくらが先生に、「もうやめて」「先生が自己犠牲をすると私が辛い」旨のことを言ってくれたのには救われた気がしたな〜
そういう人にはそれを言えるのと言えないのとでは、受け手にとっても言った本人にとっても心持ちが大違いだと思うので…。
さて、気になる本当の黒幕は、
なんとSNS。
これは予想できなかったな〜
気丈だった景山澪奈の死の真相も、なるほどという感じ……
真相を知ってみると、同じように煽られた武智先生の姿はその時の彼女そっくりに演出されていた。
ここ含め、最終話の伏線回収がすごいので、途中で観るのを止めている方はぜひ最後まで観てほしい。
このドラマは、SNSの無責任な悪意に警鐘を鳴らす内容だったよう。
熱血教師の訴えに、作中の人らが反応したように「何言ってんだこいつ」と感じる人も少なくないだろう。
ただ、作中でそういう人が愚かだと断定して書かれていることで、同じことを言おうとした人はそれが頭をよぎり、抑止力になるだろう。うまいな〜。
あとは関係ないけど、「ヒーロー」が、まさしくヒーローという記号として登場するのも胸熱でしたね。
3年A組は、ヒヤヒヤする場面、シリアスな場面も多かったけど、最終的に先生の結末含めて大団円と思える内容だった。意外であり、また良かったなと思う。
現在、Hulu 限定で番外編を観られるようですね。
楽しみに観ようと思います。
全話配信してるので、見逃した方もぜひ〜
そういえばサントラの中に、死の舞踏に似た曲がある気がして毎回気になった。
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「その悩み 哲学者がすでに答えを出しています」感想
『その悩み 哲学者がすでに答えを出しています』
文は読みやすく、現代人の感覚に寄り添って書かれているので、とてもわかりやすい。
各項目で、身近な問題などの具体例と共に一人ずつ哲学者が紹介されるので、自分の価値観に合う・興味のある哲学者を探す入門書としても良さそう。
自分はベンサムとアリストテレス、フーコー、スピノザのことはもっと知りたくなった。
人の欲求を快と不快に分ける功利主義は共感するところも多いんだけど、ミルはちょっと好みと違うかもな。
ミルはソクラテスは馬鹿に戻りたいとは思わないと言うけど、不満足したソクラテスになった上で、満足した馬鹿に戻りたい人も少なくないと思うので。
「およそ集荷する性質のものは、全て滅尽する性質のものである」(ブッダ)
「瞑想は悩む人を悩みを客観視する人にする」
「自分の課題を他者の課題と分離せよ」アドラー
「世界や自然全体が神、人の行為は経験により運命づけられ、自由意志はない。世界をクリアに解することが心の健康と平和に良い。」スピノザ
「赦しは、赦す者と赦される者を自由にする」アーレント